本年度は昨年度に引き続き、新規有機トランジスタ材料を開発するとともに、デバイス化・評価と新しい素子構造の開発に着手した。 (I)材料開発: (1)アセン系トランジスタ材料:ペンタセン、クリセンなどを中心骨格に据え、周辺置換基としてアルキル基、パーフルオロアルキル基、フェニル基などを導入した化合物群を20種類程度新規化合物として開発した。導入する置換基によって、液晶性の付与、p型、n型の制御が可能であることが確認された。 (2)含ヘテロ縮環系化合物:含ヘテロ縮環系コアを3種類考案した。また、周辺置換基を10種類程度バイリエイションを持たせ、20種類の新規含ヘテロ縮環系化合物を開発した。また、中心骨格に含まれる硫黄を酸化しn型化させた化合物についても合成を試みている。全く新しい、基本骨格であり次年度に向けて、開発を行う。 (II)デバイス化・評価と新素子構造の開発: (1)デバイス化と評価:上記で合成した化合物について、真空蒸着法、塗布法、単結晶法などの手法を用いてトランジスタ素子を作製し評価を行った。クリセン系の化合物で移動度1cm^2/Vsとアモルファスシリコンを凌ぐ性能を示すことが判明した。 (2)素子構造の開発:2重絶縁層を持つ、新たな素子構造の開発を行った。従来のSiO_2単層絶縁膜と比べて、5-10倍程度の移動度を示すポテンシャルがあることが判明した。
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