研究概要 |
ビリルビンの光異性化反応を用いた穏やかなフォトリソグラフィープロセスの探索を目的とし,昨年度には,ビリルビン薄膜の分子内水素結合の光制御がフォトリソグラフィー技術となり得ることが実証された。本年度は,有機工業材料としての有用性を見出すことを目的とし,特にプロセス上の材料設計の最も注力すべき課題として感度向上の方法について研究した。 1.水素結合部位の光異性化を促進するための手法としてアミン類の添加による効果に着目した。トリエチルアミンを添加したどリルビン薄膜について感度(パターニングができる最小エネルギー)の測定をしたところ,約1.25倍向上することを見出した。これについて赤外吸収スペクトルなどの解析からアミン類の添加によってビリルビンの分子内水素結合部位が影響を受け,光異性化効率が上がっているものと考えられる。これによって光感度向上の手法のひとつが得られた。 2.しかしながら,実用レベルの光パターニング材料の感度よりはかなり低く,100倍以上の感度向上が必要であり,増感反応との併用や化学増幅の機構の導入が必要である。したがって,当初計画していたビリルビン薄膜の溶解性変化の反応中心の解明からのモデル的なオリゴマーの材料設計の段階には至らなかった。 3.アミン類添加したビリルビン薄膜においても,可視光照射によりシリコンウエハー上にポジ型の微細パターンを形成することができ,解像度などの評価を行った。この場合の現像も中性に近いpH7.4の緩衝溶液を用いた穏やかな条件でできることから,この技術が生体物質などと適応性が良いことが示された。
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