今年度は昨年度の結果を踏まえて、ダブルロダニンのアンカー部分をカルボキシメチル基に固定し、ダブルロダニンインドリン色素の外側の窒素上の置換基をアルキル基を中心に検討した。その結果、オクチル基がエチル基よりも良好な変換効率を示した。これは暗電流の低下を防ぐことで開放電圧が高くなるためと結論された。 上の結果を踏まえて、トリプルロダニン誘導体を合成し、性能を評価した。この場合、最も内側のロダニン環にカルボキシメチル基を導入し、中側と外側にエチル基、オクチル基、ベンジル基をそれぞれ導入した。いくつかの組み合わせが考えられるが、オクチル基を導入すると、変換効率が向上した。これらトリプルロダニン色素の性能(η=4.09-4.36)は、D149(η=4.48)には僅かに及ばないかまたはほぼ同等であったが、D150と呼ばれる既知のトリプルロダニン色素(η=3.92)よりも良好であった。その原因は、トリプルロダニン色素のIPCEは71-77%で、D149の82%よりもやや低いことにある。トリプルロダニン色素の酸化電位は、アセトニトリル中で、0.36V vs Fc/Fc'で、D149の0.40Vよりも約0.04V負側にシフトするためにIPCEが減少したと考えられた。トリプルロダニン誘導体の酸化亜鉛上での最大吸収波長は520nm付近で、D149よりも約10nm長波長シフトした。しかし、この程度の長波長シフトではIPCEの低下をカバーし、高いJscを得ることはできないことから、トリプルロダニン色素の変換効率はD149を凌ぐことができなかったと考えられる。しかし、D149にくらべて、トリプルロダニン色素のVocやffは向上する傾向にあり、吸着条件を更に検討することで変換効率の向上が期待される。
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