皮膚疾患、特に色素沈着治療に対して皮膚科、形成外科専門医からその有用性に定評のあるhydroquinoneには酸素、光に対して不安定な性質がある。また皮膚刺激性も高く治療中に紅斑、かゆみ等が見られるケースも少なくなく専門医間で問題視されている。筆者のこれまでの研究において両親媒性物質と「複合体化」することにより、これら問題点を改善し、hydroquinoneの美白効果は維持したまま高い安定、安全性を持つ新規の美白成分として得ることに成功した。今回の本研究ではさらにこれまでの研究を発展させ、人体に適用可能な両親媒性物質を用いてのhydroquinone分子複合体について、皮膚透過性の検討を単体hydroquinoneと比較してFranz型拡散セルを用いて行い、皮膚への移行率をHPLC分析により算出した。 その結果、hydroquinone単体の皮膚移行率に比べて、人体に適用可能な両親媒性物質との複合体としたhydroquinoneは高い皮膚移行性が見られ、複合体化することによる効果として確認できた。これは、界面活性剤が皮膚の角質層に対して良く相互作用し、薬物移行の増大を促したと考えられる。両親媒性物質は、薬物の吸収促進剤として良く知られているが、その機能が有効に働き吸収効果を高めたと思われる。新規に作製したhydroquinone分子複合体が、安定、安全性に優れるというこれまで筆者により得られている結果に加え、皮膚吸収性に富む皮膚疾患治療薬としてその有用性が期待できると思われる。
|