本研究では、半導体レーザ(LD)励起が可能な超短パルスレーザシステムを構築するために、新規Ndドープ単結晶の浮遊帯溶融法による育成とその分光学的特性の調査をおこなった。Ca_9La(VO_4)_7およびCa_2La_<0.67>(VO_4)_2は、Nd^<3+>の入る可能性のある位置を複数有するとともに、Nd^<3+>に対して大きい陽イオン位置を提供できるため、発光帯がブロード化し、超短パルスレーザ発振が期待できる。酸素雰囲気では、両結晶とも溶融帯中に気泡が溜まり易く、安定した育成が困難であった。窒素雰囲気の場合、Nd : Ca_9La(VO_4)7結晶は気泡以外の散乱源のために白濁する一方、Nd : Ca_2La_<0.67>(VO_4)_2は黒く着色した。大気雰囲気では、酸素、窒素中での問題点を同時に解決でき、両者ともに比較的良質な部分をもつ単結晶が育成できた。しかしながら、偏光顕微鏡観察では小傾角粒界が観察され、両系とも光学的に均質な結晶を得るには至らなかった。Nd : Ca_9La(VO_4)_7の800nm帯の吸収係数は22cm^<-1>であるのに対し、Nd : Ca_2La_<0.67>(VO_4)_2は3.5cm^<-1>であり、半値幅はそれぞれ10nm、21nmと大きな値であった。Nd : Ca_9La(VO_4)_7の吸収断面積は1.44×10^<-19>cm^2となり、Nd : YAGの6.07×10^<-20>cm^2よりも大きな値となった。Nd : Ca_9La(VO_4)7は1060nm付近に半値幅17nmの、Nd : Ca_2La_<0.67>(VO_4)_2は1070nm付近に半値幅32nmのブロードな発光ピークが観測された。Yb : YAGは半値幅8nmで数百フェムト秒の超短パルス発振が実現されていることから、両結晶ともフェムト秒オーダーの超短パルス発振が期待できるが、吸収係数を考慮すると、Nd : Ca_9La(VO_4)_7の方がLD励起超短パルスレーザ材料として有望であると考えられる。
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