研究課題
吹き付けアスベストの主成分であるクリソタイルに対して、塩酸処理による無害化を実施した。現在の無害化条件はJIS A 1481:2006で規定されており、アスベストのクリソタイルの含有量を0.1%以下にしなければならない。6モル濃度で、50℃の塩酸に72時間浸漬したクリソタイルは、この規定に基づいても完全に無害化することに成功した。そして無害化された後に残留する非晶質シリカの純度は98.7%であった。これに試薬の塩基性炭酸ママグネシウムを仮焼して得られた活性マグネシア(純度:99.7%)と混合し、その成形体を加熱することでフォルステライト(Mg_2SiO_4)試料体を得た。電気的特性の評価として、得られたフォルステライト試料体の品質係数および誘電率を測定した。大気中1400℃で加熱した相対密度が91%の試料体において、品質係数は49600の値をえた。一方、さらなる緻密化を目的としてPECS(パルス通電焼結)法による焼結を行った場合、1300℃の加熱で99.7%の相対密度の試料体を得たが、その場合の試料体の品質係数は34000程度であった。PECS法により1300℃よりも高い温度で加熱した場合には、100%に近い相対密度を保持したが品質係数は低下した。PECS法による還元雰囲気化の焼結では、還元雰囲気による内部の金属元素の析出が品質係数の低下をもたらしたと考えられる。誘電率は大樹雰囲気およびPECSを用いた場合でもおよそ6〜7の値で差はなかった。いずれにせよ、アスベストのクリソタイルを塩酸処理することで得られた非晶質シリカを出発原料として、高周波特性に優れるフォルステライトを作製することに成功した。その品質係数の値は市販のフォルステライト製品と同等、もしくはそれより優れている値であり、廃棄物の再利用としての新しい可能性を見出した。
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Journal of the Technical Association of Refractories, Japan 29
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