色素が凝集することなく高濃度に分散した固体薄膜材料は波長可変の固体レーザー材料としての応用が期待されている。本研究ではこのような色素を高濃度かつ単分子状態で固定化したシリカ薄膜の作製を目的として研究を行い以下のような成果を得た。まず、シリル化マガディアイトに長鎖アルキルアミンを挿入することによって有機溶媒への分散性を高めるとともに、この分散液をキャストすることで基板に対する配向性の高い薄膜を得ることに成功した。さらに、この薄膜へ3-アミノプロピルエトキシシランを作用させることによってアミノ基を固定化した後に、アミノ基と選択的に反応する1-ピレンブタン酸の活性エステルと反応させることでピレンを層間に含んだシリル化マガディアイト薄膜を作製することができた。しかしながら、同様の方法ではピレンよりも嵩高く三次元的な構造をもつレーザー色素の挿入は困難であったため、シリル化マガディアイトのアルキル基による被覆率を小さくし、ナノシート状態での反応を行うことで、色素含有量を高くすることを試み、中程度の被覆率を持つ試料をホストとすることで凝集を抑制しつつ高濃度に色素を固定化できることを示した。さらに、シリル化マガディアイト中への色素固定化量を熱重量分析とナノシート溶液の吸収スペクトル測定から推定する方法を確立し、マガディアイトのSi_14O_29ユニットあたり0.1分子程度まで色素を固定化することができることも見いだした。
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