本研究ではホウ素/炭素/窒素からなるB/C/N材料を作製し、その電子構造を評価している。今年度は、BC_2N組成の材料を作製し、化学法によりカリウムを、電気化学法によりリチウムをインターカレーションさせ、電子構造とインターカレーションとの関連について考察した。 研究代表者の川口とその大学院生らはBC_2N組成の材料について、1470〜2070Kの一定温度でアセトニトリルと三塩化ホウ素を原料としたCVD法により作製した。2070Kで作製した材料に対し、気相法でカリウムのインターカレーションを行ったところ、比較のために用いたグラファイトの場合より低温でスムーズに反応が進行し、すべての層にカリウムが挿入された第一ステージ化合物が得られた。また、1470Kで作製した材料に関して、定電流法でリチウムを挿入させた際の電位一時間曲線は、グラファイトを用いた場合と非常に類似しており、この方法でも第一ステージ化合物が得られた。 一方、川口、上記院生、および研究分担者の村松らは、上記BC_2N組成の材料についてカリフォルニア大学の軟X線放射光施設(Advanced Light Source)にて、X線吸収分光分析を行い、材料の電子構造のうち伝導帯を調べた。その結果、BC_2Nの伝導帯の底がグラファイトより低エネルギーにあることを見いだした。この結果は、BC_2Nがグラファイトよりアルカリ金属のインターカレーションを容易に起こさせる事を示唆し、インターカレーションに関する上記の実験結果を支持する結果であった。 以上の結果に対し、二つの国際会議、および五つの国内での会議で発表するとともに、一件の論文発表を行った。
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