現在市販されているリチウムイオン二次電池は、正極としてLiCoO_2やLiNio_2を母体とする層状岩塩型遷移金属酸化物が主に使用されているが、これらの遷移金属類は資源量が乏しい希少金属類(レアメタル)であるとともに、単位重量あたりの電気化学容量は130〜200mAhg^<-1>程度にしかならない。一方、硫黄は、1600mAhg^<-1>以上の大きな理論電気化学容量を有する。さらに、硫黄は資源的に豊富で安価な素材であり、毒性が少なく、リチウム電池の正極材料として魅力的な物質である。本研究は、高いエネルギー密度が期待できる硫黄を正極材料とし、隔膜として無機系固体電解質を用いるこどにより、室温動作が可能な硫黄-リチウム二次電池系を構築することを目的としている。 本年度は、硫黄に硫化銅(CuS)を添加した複合電極材料について検討を行い、この複合電極が全固体リチウム電池の正極として機能することを確認するとともに、この硫黄電極が高エネルギー密度を有する電池の正極材料として非常に有望であることを見出している。また、添加した硫化銅(CuS)は硫黄を活性化させるための電極触媒として働いていると考えられる。
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