研究概要 |
末端にt-Bu基を有するポリ(p-フェニレン) (t-PPP)は、バルキーなt-Bu基によってポリマー鎖の結晶化が妨げられ、1,4-構造単位が16個まで連続しても有機溶媒に可溶であった。すなわち、高分子製膜に一般的に用いられるスピンコート法により薄膜作成が可能な可溶性PPPの合成に世界で初めて成功した。またその電気的・光学的特性は1,4-単位構造に依存し、1,4-単位構造の含有量、連鎖長が増えるほど優れた特性を示すことがわかった。 一方、末端にフルオレニル(FL)基やアントラセニル(AN)基を有する可溶性PPHを得たが、FL-PPHにおいてはFL基からPPH鎖へのエネルギー移動が観察され、光電変換分子としての可能性を示した。AN-PPHではAN基からPPH鎖への電子移動が観察され、電流-電圧特性を末端基によりコントロールできる事を示した。 次に、フラーレン(C_<60>)を含む可溶性PPH(PPP)を活性層に用いた光電変換素子の作成を検討した。C_<60>は有機溶媒に難溶であるため、C_<60>にアルキル基であるBz基を付加することを検討したところ、有機溶媒(THF等)に容易に溶解する可溶性C_<60>(BzC_<60>)を合成できた。そして、可溶性PPH(PPP)とBzC_<60>の積層もしくは単層(混合)を活性層とするITO/PEDOT:PSS/活性層/LiF/Al構造の有機薄膜素子を作成した。活性層の製膜にはスピンコート法もしくはエレクトロスプレー(ESD)法を用い、ESD法では条件を選択することにより様々な形状の高分子薄膜が形成できることを初めて見出した。これは、光電変換素子や光触媒として可溶性高分子半導体を用いる場合のキーとなり得る技術である。得られた素子は、光電変換素子としての性能を発現することが確認され、今後新しい有機薄膜太陽電池への展開が期待される。
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