研究概要 |
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)にエチレングリコールを3%添加した溶液をキャストすることで、PEDOT/PSSフィルムを作製した。PEDOT/PSSフィルム(長さ10〜50mm、幅1〜10mm、膜厚10〜66μm)に直流電圧を印加したところ、いずれのフィルムも印加電圧とともに収縮率は増加するが、ある電圧以上で逆に低下した。これは、水分子の脱着による収縮に対して、ジュール熱による熱膨張がより顕著に現れたためと考えられる。フィルム長が10〜50mmと長くなるに従い収縮率も増大し、フィルム長40mm以上で収縮率は1mmに達した。また、フィルム幅が1〜10mmと広くなるに従い収縮率も増大し、最大の収縮率がより低電圧側にシフトすることがわかった。一方、収縮率(%)と電力密度の関係は同一曲線上にはのらず、フィルム幅とともに増加することがわかった。これは、フィルムの断面積が増したことで収縮応力が増大し、拮抗するバネをより大きく収縮させたためと考えられる。膜厚が10〜66mmと厚くなるに従い収縮率は増大し、フィルム幅の場合と同様、最大の収縮率がより低電圧側にシフトした。フィルム幅66μmで、収縮率が最大1.5mmに達することが明らかになった。しかしながら、フィルムが厚くなると応答が著しく遅くなることが確認された。これは、フィルムの伸縮が水分子の拡散律速であるためであり、実用化の際には、変形量と応答速度を考慮してアクチュエータ素子を設計する必要があることが示唆された。
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