平成19年度の目的は、当初の研究計画で述べたようにメゾ化と言う現象を急冷下で顕微鏡を用いて直接観察することにより、どのようなことが、何度で起っているかを突き止めることである。一般に結晶性高分子の高温溶融物を冷却していくと、球晶の核が発生する。球晶の成長速度は、温度に応じて変化し、融点とガラス転移温度との間ぐらいで最速となる。また、融点近傍では過冷却度が小さ過ぎて成長速度は0に近い値となる。また、ガラス転移温度近傍でも粘性が高過ぎて、やはり、成長速度は0に近い値となる。DSCを用いた研究から、メゾ相は、ガラス状態に近い固体であることがわかった。よって、メゾ化すれば、ガラス化と同様、球晶の成長を阻害し、球晶成長速度は激減するとの予測のもと、アイソタクチックポリプロピレンの急冷過程の顕微鏡観察を行い、球晶成長速度の温度依存性を調べた。その結果、アイソタクチックポリプロピレンのガラス転移温度は、文献によると、-10〜-20℃と言われているのに対して、この温度より遥かに高い30〜40℃付近で球晶の成長速度が激減するという観察結果を得た。すなわち、30〜40℃付近がメゾ化温度である可能性が有力となった。平成20年度には、この30〜40℃付近に実際にメゾ化が起っているのかについて構造的見地からの証拠を得るべく、急冷過程のX線散乱実験(SPring-8)を計画している。
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