研究課題/領域番号 |
19550213
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
前川 康成 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (30354939)
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研究分担者 |
陳 進華 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (30370430)
長谷川 伸 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (60354940)
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キーワード | 放射線 / グラフト重合 / 高分子変換反応 / 燃料電池 / 電解質膜 / スルホン化 / アルキルスルホン酸 / 高分子膜 |
研究概要 |
自動車用や家庭用燃料電池に適用可能な高温での耐久性と低加湿条件でイオン伝導性を併せ持つ高分子電解質膜の合成を目的として、高温耐久性の高分子膜基材に、放射線グラフト重合と生成したグラフト鎖の化学変換により、スルホン酸と親水性基であるカルボン酸(COOH)、水酸基(OH)を有する電解質グラフト鎖の導入を試みた。初年度に検討したアクリル酸、酢酸ビニルについての放射線グラフト重合、及び、グラフト鎖の高分子変換反応によるアルキルスルホン酸、アルキルエーテルスルホン酸の導入に加え、ヒドロキシメチルアクリル酸の放射線グラフト重合とそのスルホン化方法についても検討した。 上記検討を通して、スルホン酸に加え、カルボン酸を有するグラフト鎖(G-COOH)、水酸基を有するグラフト鎖(G-OH)、及びカルボン酸と水酸基を有するグラフト鎖(G-COOH/OH)を作製することができた。そこで、これらの低加湿条件(30%RH)での導電率を比較した。これまで一般的に用いてきたグラフト型電解質膜に比べ、G-COOHとG-COOH/OH電解質膜は導電率が低下した。一方、G-OH電解質膜は従来膜よりも約一桁高い導電率を示したことから、低加湿条件、すなわち、電解質膜中に水分子が少ない状態では、グラフト鎖の水酸基がそのイオン伝導性を向上させる新たな知見が得られた。 次に、高温での耐久性を調べるため、基材膜とグラフト鎖の構造の異なる電解質膜の熱水中での安定性を評価した。これまで耐久性に重要と考えられてきたグラフト鎖の構造は耐久性にあまり影響を及ぼさないのに対し、基材膜を従来のフッ素系膜から芳香族炭化水素系膜にすることで、その耐久性が大幅に向上すること、その原因がグラフト鎖の基材膜からの剥離の抑制であることを見出した。これらの結果は、今後の高温・低加湿下で耐久性を示す電解質膜の研究開発に重要な知見である。
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