本研究課題の目的は、イオン液体における分子間振動ダイナミクスと分子間相互作用について、特に構成イオンにおける原子量の違いによるバルク物性(粘度など)や分子間振動ダイナミクスにおける影響を検討するものである。これまでのイオン液体における研究は、カチオンとアニオンの置換に関する検討が主に行われてきたが、構成イオンの一原子に注目して、その効果を明らかにすることを目的にした研究は、申請者が2005年に発表した研究のみである。本研究期間で達成したことは、(1) 時間応答が約30フェムト秒である世界最高峰の光カー効果分光装置を作製した、(2) 40種類の分子性液体の分子間振動のデータ蓄積した、(3) 球対称アニオン系イオン液体の粘度における重原子置換効果の発見した、(4) そのイオン液体における分子間振動ダイナミクスの重原子置換効果の観測と分子レベルでの新しい解釈を与えた、ことである。また、この研究課題では、理論家(分子科学研究所・石田干城博士)との共同研究に発展した。
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