研究概要 |
金属や半導体などのナノメーターサイズの微粒子は量子効果によりバルク材料とは全く異なる優れた性質を発現する。このため,ナノ微粒子のデバイス化を目指した研究が近年活発に行われている。これらの材料をデバイスへと展開するためには,ナノ微粒子をいかに効率よく組織化するかが鍵となる。本研究では,光応答性液晶を利用して金属ナノ微粒子を集積化・組織化することを検討した。フォトクロミック分子であるアゾベンゼンを液晶中に分散しtrans-cis光異性化を誘起すると,液晶相から等方相への相転移(光相転移)や光誘起された等方相の液晶相からの分離(光相分離)が起こり非液晶分子(cis-アゾベンゼン)が等方相領域に凝集することが報告されている。そこで,例えば,アゾベンゼンを結合した金属ナノ微粒子を液晶中に分散し光相分離を誘起すると,等方相領域に微粒子を集積化・組織化することが可能であると考えた。今回は液晶性アゾベンゼンを結合した金属ナノ微粒子の合成とその液晶挙動および光応答挙動を検討した。本研究では金属ナノ微粒子として合成が比較的容易な金のナノ微粒子を用いた。得られた化合物・微粒子の構造はNMRにより確認した。アゾベンゼン部位の光異性化挙動は紫外-可視吸収スペクトル法により観察した。光応答挙動は,光源に500W高圧水銀灯を用いフィルターを組み合わせて366nmの輝線を照射して観察した。吸収スペクトル測定の結果,アゾベンゼンに由来する吸収帯の他に500nm付近に金ナノ微粒子のプラズモン共鳴に起因すると考えられるブロードな吸収が観察された。この結果から,ナノサイズの微粒子が合成できたと判断した。また,紫外光照射を行って吸収スペクトルを測定し,金ナノ微粒子上でもアゾベンゼン部位の光化学反応が可逆的に起こることを確認した。さらに,偏光顕微鏡観察およびDSC測定の結果,合成した微粒子は液晶性を示すことが分かった。
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