研究概要 |
本研究の目的は、Dion-Jacoboson相であるNbO_2面を3枚有する層状酸化物に「遷移金属-アニオン」格子をイオン交換で挿入し、NbO_2面の歪が少ない準安定物質を合成する。そして、Liインターカレーションによりキャリアを導入することで超伝導化を目指すものである。 今年度は、母体をCsSr_2Nb_3O_<10>として、種々の臭化物をCsサイトにイオン交換することで、金属-アニオン格子を置換することを試みた。x線回折と組成分析の結果、SrBrとCuBrの置換に成功した。SrBrがイオン交換で挿入された報告例は無い。これら(ABr)Sr_2Nb_3O_<10>(A=Sr, Cu)に、電気化学法でLiインターカレーションによるキャリア導入をおこなった。Li量は0.5程度結晶に導入できたが、T=2K以上での超伝導転移は確認できなかった。 他方、Aurivillius相であるBi_2O_2SrNaNb_3O_<10>を母体としてイオン交換を行い、Bi_2O_2層をFe_2Br_2層に置換し、この層での超伝導の発現を狙った。これは、最近発見されて注目を集めているFe系超伝導体のひとつであるFeSeとFe_2Br_2層が類似の構造であることに着目したものである。まず、母体に対して酸処理によるプロトン化をおこないH_2SrNaNb_3O_<10>を合成した。つぎに臭化鉄と反応させてイオン交換をした結果、Fe_2Br_2層が導入された(Fe_2Br_2)SrNaNb_3O_<10>の合成に成功した。しかし、不純物相が有り、単相は得られなかった。Liインターカレーションによるキャリア導入もおこなったが、超伝導は確認できなかった。
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