研究概要 |
1、強磁性(FM)/非磁性(NM)、あるいは強磁性(FM)/反強磁性(AF)界面における電子状態と磁気構造を明らかにする目的で、磁気モーメントのノンコリニア配列とスピン軌道相互作用の両者を効果を考慮した電子状態計算プログラムを作成した。本手法により、任意の磁気構造の予測とその安定性、および結晶磁気異方性エネルギーなどの評価が可能となった。具体的な計算例を以下に示す。 (1) 永久磁石材として知られるNd_2Fe_<14>Bとbcc-Feを(100)面で接合させた場合、両層の磁化が反平行配列する可能性があることを示した。また、このとき、界面近傍のNdイオンの結晶磁気異方性定数は負となり磁化の容易方向がNdFeBバルクと異なる結果となった。本研究は交換スプリング磁石の磁気特性を微視的立場から評価した初めての例である。(2) 磁気記録材料媒体として期待されるL1_0型FePt薄膜の電子状態と磁気構造およびその安定性(交換相互作用強度)を評価した。FePtの結晶磁気異方性エネルギーはFeとPtがそれぞれ一層の極薄膜においてもバルクと同等の値(〜10^7erg/cc)を有することを示した。また、ギルバート緩和定数を第一原理的に評価したところ、Ptの大きなスピン軌道相互作用定数に起因して、FeやCoより1桁大きい値を持つことを示した。 2、上記の磁性体の電子状態の計算手法(第一原理計算)のもとで、電気伝導度を計算するプログラムを作成し、スピントロニクス分野での応用が期待されている遷移金属合金Fe_<1-x>Ni_x, Fe_<1-x>Co_xおよびホイスラー合金Co_2MnAl_<1-x>Si_xを取り上げ, 電気伝導度の評価を行った。得られた電気抵抗率は低温における実験結果と定量的によく一致しており、スピン別の電気伝導度から得られるスピン分極率はFe_<20>Ni_<80>, Fe_<50>Co_<50>において80%程度であることがわかった。今後、本手法を拡張し、GMRやTMR素子の磁気抵抗変化率の定量評価を行っていく予定。
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