縦型発光ダイオードは、レーザー光を用いてデバイス構造を基板から分離するレーザーリフトオフ技術が主流となっている。しかし、この技術は、(1)レーザー光によってGaN層が損傷を受ける、(2)レーザーリフトオフの前にサファイア基板の研磨プロセスが必要である、(3)ウエハーを一枚一枚処理する、いわゆる枚葉処理であり、多数枚一挙に処理できるバッチ処理が困難、等々のデバイス作製プロセスの問題のために、歩留まりが低く、LED価格の低価格化が難しい。これに対して、ケミカルリフトオフ技術は非常にシンプルなプロセスであるために、プロセスコストの大幅な低減と、高い再現性と歩留まりの大幅な改善が期待できる。本研究では格子定数、熱膨張係数共にGaNとサファイヤの中間値を有する物質である岩塩構造窒化クロム(CrN)に着目した。三角錐ナノ微結晶構造の岩塩構造CrNバッファ層の上に横方向成長技術によって簡便に低欠陥、高品質GaN薄膜の成長が可能であると考えられる。さらに、縦型LED構造を実現するために、CrN三角錐ナノ微結晶の選択的化学エッチングによりサファイヤ基板とGaNの薄膜を分離するケミカルリフトオフ技術の開発を目指す。これによって多数枚のバッジ処理、およびサファイヤ基板の再利用が可能になり、従来の方法に比べ大幅なコスト低減が可能となる。平成19年度は有機金属気相成長法(MOCVD)によるCrN三角錐ナノ結晶成長条件の最適化を行い、CrNナノ微結晶の表面モルフォロジとCrNの結晶性の向上に成功した。さらに、このMOCVD成長条件の最適化を通して、CrN三角錐ナノ結晶構造上に成長したGaNの結晶性の向上が実現され高品質のGaN膜を得ることが出来た。
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