GaN自立基板を得るためのケミカルリフトオフ(CLO)技術を開発した。サファイヤc面基板上にRFスパッタ蒸着したCrを窒化することで厚さ20nmのCrNバッファ層を形成し、さらに厚さ40μmのGaNをHVPE成長した。CrN層は過塩素酸ベースの混合溶液で選択的に化学エッチングされ、GaN膜をサファイヤから分離できた。CLOに伴ってGaNの束縛励起子発光エネルギーは9meVレッドシフトし、c軸格子定数は0.056%減少した。CLO前のGaNは面内に圧縮歪を受けており、レッドシフトはGaNの変形ポテンシャルと格子定数変化から予想される値とほぼ一致した。CLOで得た自立GaNの格子定数と束縛励起子発光エネルギーは無歪GaNの文献値と一致した。CLOによりX線回折ロッキング曲線の半値幅は僅かに改善された。これらの結果からCLOにより無歪GaNが得られ、CLOの過程で新たな欠陥が導入されることはないと考えられる。縦型LEDは以下のように作製した。(1) サファイヤc面上にCrNバッファ層を形成した後、LED構造(n-GaN層上にp-GaN層)を成長(2) p-GaN上にNi/Auを電子ビーム蒸着し5分間600℃の大気圧アニールでオーミック接合を形成(3) その上に厚さ50μmのAuを金属サポータとして蒸着(4) CLOによってサファイヤ基板からLED構造を剥離(5) n-GaN上にTi/Al/Ti/Auのオーミック接合を形成。1mm×1mmのLEDの順方向ビルトイン電圧は2.27Vであり、I-V曲線の傾きより直列抵抗は0.65Ωと小さかった。CLOによって剥離したGaNとサファイヤ表面を原子間力顕微鏡で観察すると平坦であった。サファイヤ基板は再利用が可能であり、従来のGaN-LED作製法に比べ大幅なコスト低減が可能となる。
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