研究課題
本研究の目的は、貴金属を含むカルコゲナイドガラスにおけるイオン輸送特性と光機能特性の微視的機構を明らかにすると共に、これらの接点から生み出されるフォトイオニクス現象の可能性とその基礎物性を理解することにある。本年度の主な研究実績は次のとおりである。1イオン導電体が融けたとき、どのように振舞うのか。これまでの研究から、AgやCuのハライドやカルコゲナイドは、液体アルカリハライドのような典型的なイオン性液体とは異なる振舞いを示すことが知られている。本年度の研究では、長年の謎である液体Ag-SとAg-Seで見出されている異常な電子物性の振舞いを説明するモデルを提案した。当モデルによると、化学量論的組成で可動イオン周りの第2近接電子軌道間の相互作用が強くなることで電子移動度が増加し、電子伝導度の組成依存性に異常性が生じる。今後は、これらの性質と光誘起現象との関連性について調べる。2液体Ag-Se系における音速の組成依存性を、流体力学的モデルを用いて調べた。モデルの中に繰り込まれているイオン間相互作用の遮蔽定数の効果を調べることで、力学物性と電子物性との関連性を明らかにする試みを行なった。3昨年度に引き続き、超イオン導電ガラスにおける非線形光学現象に関する研究を行なった。イオン導電ガラスが何故高い屈性率を示しうるのかを結合論の観点から考察し、Agのd-電子が果たしている役割を明らかにした。酸化物ガラスの光学的性質の研究でよく用いられるBoling-Glass-Owyoungの式や、半導体の分野で用いられるSheik-Bahaeの式に基づいて超イオン導電ガラスの光学的性質の解析を行なった。その結果、以前から主張している結合揺らぎに基づくイオン伝導機構は、光誘起現象においても本質的な役割を果たすことが明らかになった。
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