今年度は新構造赤外素子として量子井戸レーザおよび赤外光検出器の試作を行った。まず、量子井戸レーザに関してはInAsSbN層の成長条件を把握するとともに、これを量子井戸活性層に用いた赤外量子井戸レーザを試作した。バリア層にはInGaAsN層を用いた歪み補償構造を採用した。また光ガイド層にはInGaAs層、クラッド層にはInAlAs層を用いることとした。その結果、210Kで波長2.3μmのパルスレーザ動作を実現することが出来た。また発振閾値の特製温度は60K程度であり、光通信用レーザと同程度の値を得ることが出来た。これはInAsSbN層を用いた初めてのレーザ動作である。 次に赤外光検出器に関しては、光吸収層としてInGaAsN層とInGaAs/GaAsSbタイプII量子井戸層の2種類を検討した。InGaAsN層については格子整合条件で波長2μmのフォトルミネッセンス(PL)発光を観測することに成功した。しかしながらそれ以上の長波長化は実現出来なかった。これに対してInGaAs/GaAsSb層に関しては行使整合条件で波長2.4μmまで長波長化することが可能であった。このタイプII量子井戸構造を用いることにより、プレーナ型の光検出器を試作した。その結果、室温での暗電流として37nA/cm^2というこの波長帯では最少の値を実現した。
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