多くの3元系の混晶が抱える歪みのメカニズムの解明のために、希薄磁性半導体Cd_<1-x>Mn_xTe(x=0.4)単結晶のMn-Kα蛍光X線ホログラフィーの実験を行った。入射エネルギーが13.5〜17.0keVの範囲(0.5keV刻み)で8本のホログラムを取得し、Mn周辺の3次元原子像を再生した。本数が若干少ないために共役像と思われる虚像が見られるが、第7配位までの原子配列を観測することができた。その結果、第1、3、4、6、7配位が概ねX線回折から予測される位置付近に存在することが分かった。また、第2配位はX線回折の結果より予測される位置からの変位が見られ、第5配位は全く観測されなかった。このことからMnと第2配位の陽イオンの位置関係、および第5配位のTeとの位置関係が大きく歪むことで、全体として閃亜鉛鉱構造を保持していることが推測される。以前に測定していた同種・同構造の希薄磁性半導体Zn_<1-x>Mn_xTe(x=0.6)では、ZnとMnの第2配位は全く観測されなかった。そのため、陽イオンとその第2配位の位置関係に大きな歪みが存在することが予測されていたが、その詳しい様子は分かっていなかった。今回のCd_<1-x>Mn_xTeの測定によって、その変位の様子が初めて明らかとなった。この結果は、この物質の歪みメカニズムの全体像を明らかにする上で非常に有益な情報になるものと考えられる。この内容は、2008年3月に春季応用物理学関係連合講演会(日大船橋キャンパス)にて報告した。また、本年5月に第4回結晶成長と結晶技術のアジア会議(CCGT-4、東北大学・金研)にても報告する予定である。
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