多くの3元系の混晶が抱える歪みのメカニズムの解明のために、平成19年度に希薄磁性半導体Cd_(1-x)Mn_xTe(x=0.4)単結晶のMn-Kα蛍光X線ホログラフィーの実験を行い、Mn周辺の3次元原子像を得ていた。平成20年度は、その原子像の位置と強度について詳細な解析を行った。その結果、第5配位までの原子位置に大きな歪みがあることと、その歪みが第6、7配位付近で収束することが明らかになった。 このホログラフィーの結果は、X線回折の結果(長距離秩序)と広域X線吸収微細構造EXAFSの結果(短距離秩序)の矛盾を橋渡しする「中距離秩序」を明らかにしたと考えることができる。また、このような描像に対する理解を深めるために、他の3元系混晶であるTi_<50>Ni_<44>Fe_6(形状記憶合金)とIn_(1-x)Ga_XSb(III-V族化合物半導体)のホログラフィー測定と解析も行った。それらの結果、結晶構造が同じであるIn_(1-x)Ga_xSbとは、よく似た傾向があることが分かった。一方、Ti_<50>Ni_<44>Fe_6のFe原子周辺の局所構造は全く異なる歪み方をしている様子が明らかとなった。これらの結果は、2008年5月の第4回結晶成長と結晶技術のアジア会議(CCGT-4、東北大学・金属材料研究所)と2009年1月の第22回日本放射光学会年会(東京大学本郷キャンパス)にて報告し、また、Journal of Crystal Growth誌に掲載された。
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