3元系混晶の歪みのメカニズムの解明のために、平成19~20年度に希薄磁性半導体Cd_<0.6>Mn_<0.4>TeとIII-V族化合物半導体In_<1-χ>Ga_χSbの単結晶に対して、蛍光X線ホログラフィーの実験を行い、MnやGa周辺の3次元原子像を得た。その結果、共に第5配位までの原子位置に大きな歪みがあることと、その歪みが第6、7配位付近で収束することが明らかになった。平成21年度は、ガンマ線検出素子材料Cd_<0.96>Zn_<0.04>Te単結晶のZn-Kα蛍光X線ホログラフィーの実験・解析を行い、Zn周辺の局所原子配列を分析した。その解析の結果、Cd_<0.6>Mn_<0.4>TeやIn-<1-χ>Ga_χSbとは異なり、Cd_<0.96>Zn_<0.04>Teでは、第1配位のみが強く歪み、中距離秩序が全く歪んでないことが明らかになった。この物質はII-VI族希薄磁性半導体の母体が構成する3元系材料であるが、Cd_<1-χ>Mn_χTeなどとは異なり高濃度組成の結晶化が難しい。蛍光X線ホログラフィー実験より明らかになった中距離秩序の歪みの有無が、3元系以上の混晶において、その結晶化の正否を決定する要因になっていると考えられる。これらの結果は、2009年10月の第11回電子分光と電子構造の国際会議(ICESS11、奈良県新公会堂)と2010年1月の第23回日本放射光学会年会(イーグレ姫路)にて報告した。また、Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena誌に投稿中である。
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