研究概要 |
白色有機EL素子用発光材料には、蛍光材料と燐光材料とがある。燐光材料の方が高い効率であるのは理論的にも実験的にも知られているが、効率の観点からのみ材料を決めてよいのかについて疑問をもち、いくつかの蛍光材料の特性を光学測定により調べた。 安定で高い輝度をもつ蛍光分子として知られているアルミニウムキノリンAlq_3がもつ特性を、その溶液、結晶および薄膜状態で光学測定を行い、状態の違いによる特性やα相γ相δ相などのいろいろな結晶相での分子振動と電子状態を調べた。Ir(ppy)_3燐光体を増感剤として用いることによるAlq_3の燐光強度の増大化に成功した。Alq_3のほかに、正孔輸送層に用いられるフェニルアミン類のTPDについても発光および吸収スペクトルを10Kから室温の範囲にわたって測定を行い、電子状態と薄膜での分子形態、および光励起発光測定による内部量子効率を調べた。90%に近い効率が得られ、青色発光材料としてTPDが有用であることを見出した。 発光するドーパント材料だけでなく、ドープされる青色発光用ホスト材料にはどのようなものがよいかの材料開発研究にも取り組んだ。その一つとして,従来のCBPホストよりもSimCP2がガラス転移点やモルフォロジや電荷移動度の観点から最適であることを見出した。 白色有機EL素子としては、蛍光材料を用いたものと、緑色発光Ir(ppy)_3と赤色発光PtOEPの燐光分子などの燐光材料を用いたものとの両者について発光特性を実験的に調べた。一方、電荷注入による発光のELだけでなく光励起発光PLについても測定を行い、ELとPLとの相違点(例えば、PLでは白色となるがELでは単色になる)を見出し、相違がなぜ生じたかを考察した。
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