次世代半導体デバイスの安定性や信頼性の向上においてゲート絶縁膜の構造ゆらぎ"の要因を解明することは必要不可欠である。"構造ゆらぎ"は局所的な電気伝導特性のゆらぎに反映されることから、局所的な電気伝導特性から"構造ゆらぎ"を評価することができる。また、その電気伝導に寄与するキャリアタイプ(電子および正孔)の同定によって、詳しい解析を行うことが可能となる。本研究の目的は電流検出型原子間力顕微鏡(C-AFM)にキャリアセパレーション法を適用し、ナノ領域におけるキャリアタイプ別極微少電流特性測定を可能とする評価技術を確立することである。そこで、本年度は作製条件の異なる極薄SiONゲート絶縁膜(厚さ1.2nm)について、C-AFMを用いて劣化機構の検討を行った。その結果、MOSデバイスにおいて初期不良率の高いゲート絶縁膜は低電圧下のC-AFM電流像に他の絶縁膜に比較して大きなゆらぎが観察され、また、MOSデバイスでの破壊寿命の短いゲート絶縁膜では高電圧ストレスに対して、リークスポットが形成されることが分かった。このリークスポット数は一回のストレスで飽和し、その後のストレス印加ではほとんど増加せず、絶縁膜に内包する欠陥に起因することがいえる。なお、AFM装置の変位検出用レーザー光による大きな光励起電流のために少数キャリアに起因する電流が測定できず、キャリアのセパレーションを行うことはできなかった。ゲート絶縁膜材料に限らず半導体材料の局所的な電流観察を行うためには、変位検出に光を用いないC-AFM装置を開発する必要がある。
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