UHV in-situ HR-profile TEMは、実空間かつ原子レベルでその場観察でき、実際に表面・界面での時々刻々変化していく様々な物理現象の解明できる強力な手法の一つである。また、HAADF-STEMは、電子プローブを試料上の1Å程度の領域に絞るため、試料の原子コラムレベル毎の組成分析が可能であり、高角度散乱した非弾性散乱電子で結像するため、曖昧さのない原子コラム位置を直視観察できる特徴をもつ。本研究では、上述した手法の強力な特徴を生かし、市川らによって報告されたナノ構造体による新しい物性や素子特性が期待されるSi基板に形成した極薄Si酸化膜上でのGeナノドットの作製を試み、まず(1)同基板上でのGeナノドットの核形成、成長などの一連のプロセスを明らかにし、次に(2)GeナノドットとSi界面近傍における微細構造、および原子拡散現象などを解明することを目指した。 平成19年には、上記(1)関してUHV in-situ HR-profile TEMを用いて、Geナノドットの核形成・成長については、臨界核サイズを境に最初緩やかに成長してから急激に成長する2段階の成長様式をし、また、形成されたGeナノドットは、Si基板上にエピタキシャル成長し、約70%が単結晶であることを明らかにした。 平成20年には、上記(2)関してUHV in-situ HR-profile TEMとHAADF-STEMを用いて、Geナノドット直下に極薄Si酸化膜が存在する証拠を世界で初めて実空間で捕らえおり、また極薄Si酸化膜直下には新たなGe-rich layerが存在することを明らかにし、本系における原子レベルでの新しい構造安定モデルを提案することができた。
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