本年度の本研究では、電界放出素子の特性揺らぎの要因解析のために、引き続きその場特性解析装置の改良を行った。特に昨年度の検討で、アナログ回路を用いた手法については指数・対数回路の温度補償の問題があったので、これについて検討した。その結果、温度特性の良好なFNプロッタを試作することができた。ただし、この回路は周波数特性があまり良好ではなく、特に切片・傾きの同位相を維持するためには、数Hz程度の低い周波数で動作させる必要があることがわかった。しかしながら、この回路でも、今回見極めようとしているステップ状の変化に対しては有効であることがわかった。一方、電流・電圧をDA変換してPCに取り込み、その後ソフト上でFNプロットを作る方法は、今回作製したソフトでは、電圧・電流信号の交流分や直流分に変動があった場合の振幅値検出において、やや精度が悪化することがわかった。しかしながら、ステップ状の変化に対しては高い精度で値を得ることができた。また、FEM像の解析としては、得られる画像(bitmap形式)の差分を得ることで、電界放射顕微鏡像の変化分の検出を行った。実際に超高真空雰囲気下でステップ状電流変動とFEM像における輝点の有無の関係を得ることができた。また、輝点発生時に蛍光板上では全体の輝度の低下も観測され、FEM像の変化が単純ではないことが明らかになった。ステップ状の電流変動とFEM像の輝点の関係は明らかとなったが、改めて解釈の難しい点も見出された。得られた結果は、国際真空ナノエレクトロニクス会議、応用物理学会、日本真空協会において発表した。
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