研究概要 |
基板上での分子自己組織化の研究として,有機EL素子の発光分子として有名なAlq3分子について,Cu(111)を基板として用いて,低温・走査型トンネル顕微鏡(STM)で調べた.室温基板上に蒸着した時,Alq3分子は自己組織化することなく単分子が分散していたのに対し,基板温度が260K以下では一次元鎖を形成することが明らかになった.詳しい解析により,室温基板に吸着した分子が安定な吸着構造をとるのに対し,低温基板では準安定な吸着構造をとり,その準安定構造の時のみ一次元鎖を形成することが明らかになった.このAlq3分子のSTMトンネル電子励起による発光を調べたが,検出感度以下であった,これは,金属基板へのエネルギー失活が原因と考えられる。そこで,基板をNiAl(110)に変え,酸化によってアルミナ絶縁薄膜を形成させ,エネルギー失活を抑える試みを行ったところ,微弱ではあるが単一分子からの発光を検出することに成功した.発光は,正負両バイアス電圧で検出することができた.今後は,この発光の詳細を測定して行く予定である.
|