研究概要 |
所属機関の異動に伴い,実験装置など研究室インフラ整備の必要が生じ,単原子電子源専用の真空槽と各種測定装置を立ち上げた.その結果,背圧10^<-8>Pa台の超高真空下で実験できる環境を実現し,コンピュータにより基本的な電子放出特性を自動計測できる測定システムを構築した.立ち上げた実験装置を用い,単原子電子源の形成を確認した.Ultrasharp WtipにPtを蒸着し,約700℃で加熱したところ,引き出し電圧は,600Vから約100V下がり,放出角は著しく狭まり,約±3°になった.このとき,Fowller-Nordheimプロットの傾きの大きさは小さくなる傾向を示した.これは,先端の曲率半径が小さくなることを示す.前所属機関でFEM/FIM複合装置を用い実施した実験結果から判断し,新たに立ち上げた単原子電子源を作製できることを確認した。作製した電子源を,意図的に壊し,再度,加熱したところ,電子放出パターンと放出特性は復活した.自己修復機能を確認した.この次に,磁性原子を吸着させることになるが,蒸着源の準備が間に合わず,その段階には至らなかった.今年度より磁性材料を吸着させるが,磁性原子以外にも,CoフタロシアニンやMnフタロシアニンなどの分子を吸着させた系での電子放出も行う.W基板上金属M薄膜(M=Pt,Pd,Rh,Ir)の構造観察の実験については,使用できるSTM装置がなく,実施できなかった.今後は,FEMを用い,構造を観察することとする.以上総括すると,代表者の研究環境の変化による進捗の遅れが若干あるものの,目標に向い着実に進行していると考えている.
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