近年注目を集めている抵抗変化型不揮発メモリー(Resistive Random Access Memory;RRAM)について、その抵抗変化を起こしていると考えられる界面の状態を動的に解析することを目的に研究を進めている。本研究では、メモリー効果の鍵を握る酸素の放出の出入りが大きいイットリアを取り上げ、種々の界面反応分析と応用技術の提唱に成功した。主要な成果として(1)電気的な測定により、界面電荷の動力学を反応状態に応じて解析、(2)新たな埋もれた界面反応のX線非破壊分析の実施、(3)極薄酸化物薄膜の特性分析により、微細構造作製に有利な「自己マスク」加工法を提案した。 (1)では、昨年度の成果であるX線反射率測定による構造解析に完全対応した、界面の電荷受け渡しのダイナミクスを誘電緩和測定により定量測定することに成功した。この電荷の受け渡しこそRRAMのメモリー動作の本質である。実際、誘電緩和測定により電荷のホッピングサイトを見出し、その動的特性を明らかにした。(2)では、界面の反応を非破壊で分析できる硬X線光電子分光を行い、界面反応によるイットリア水酸基の形成を見出した。詳細なメカニズムは更に分析が必要で有るが、こうした界面生成物の同定は、前述の「構造」と「電荷のダイナミクス」に「化学組成」を加えた三つ巴の界面状態の非破壊統合分析をもたらす。(3)については極薄イットリア薄膜のプラズマ高いフッ素プラズマ耐性を見出した。このことは、イットリアをエッチングマスクとして用いて、そのままデバイスに作り込む、いわゆる「自己マスク」といった高度な極微細加工技術が適用できることを意味している。
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