本研究は、2次元半導体レーザから出力される複数のビームをそれぞれ光ファイバに結合させるための光結合系を設計・製作することを目的とする。平成20年度は、レンズタイプや光ファイバの種類が異なる光結合系に対して結合効率ならびにトレランスを解析した。さらに、市販の光学部品を用いて光結合系の試作を行った。 まず、解析については、コア径80μmのステップインデックス型マルチモード光ファイバを用いた光結合系に対して、レンズタイプの違いによる結合効率の変化を解析した。その結果、標準的な開口数を持つSLSタイプのレンズを用いる方が開口数の大きいSLWタイプのレンズを用いるより、結合効率が高くなることを明らかにした。更に、シングルモード光ファイバを用いた光結合系の結合効率を解析したところ、マルチモード光ファイバを用いる場合に比べて、結合効率が大幅に低下するとともに、レンズピッチに対するトレランスが極端に小さくなることが明らかになった。 これらの計算結果を踏まえて、試作にはコア径80μmのステップインデックス型マルチモード光ファイバを使用した。まず、2次元半導体レーザをA1Nサブマウントに取り付け、サブマウントを銅のステムに融着した。次に、レンズ付の光ファイバを9本用意して出力ビームの向きに沿ってV溝加工を施した治具に光ファイバを接着した。更に、半導体レーザと光ファイバアレイを微動ステージに取り付けて光ファイバに結合する光パワが最大になるように調整を行った。今回の試作では、4本の光ファイバで故障が起こり、5本の光ファイバで光の結合が確認できた。結合効率は、最も高いチャンネルで0.56%となり、全体的に低い値を示した。これは、半導体レーザの構造が十分に最適化されていないことが主な原因である。 素子構造を最適化して結合効率を高めることと光結合系の組立て方法を改善することが今後の課題である。
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