研究概要 |
平成20年度は、主に装置の改良とデータ蓄積を行った。装置の改造に関しては、レーザー照射位置、レーザー波長について検討した。大腸菌懸濁液を観察する場合に、うまくレーザースペックル像が得られず、懸濁液のどの位置にレーザーを照射すればよいのか調べたところ、顕微鏡の焦点よりも僅かに下側にレーザー光を照射し観察することで、均一なレーザースペックルが観察でき、懸濁液の評価を行いやすいことが明らかとなった。レーザー波長については、405, 635, 780nmの3種類の波長で比較を行った。実験の結果、理論通り、波長が短い場合には、レーザースペックルの縞模様が細かくなり、画像の分解能は向上するものの、細胞の活動状態については、赤外の780nmのレーザー照射の場合が、最も明確に評価が可能であった。最適な照射レーザー波長は、観察する試料の吸収特性にも依存するが、生体試料の場合には、透過が比較的大きな、赤外光が好ましいことが実験的にも示されたことになる。大腸菌懸濁液の場合には、ある程度吸収特性が分かっているため、理論的な最適波長の導出を試みた。その結果、長波長になるに従いレーザースペックルによる解析能が上がることが示された。以上の結果から、生体試料を観察するには、近赤外のレーザー光で照射し、赤外カットフィルタを取り除いたCCDカメラで観察するのが最適であることが判明した。なお、波長可変プラスチックレーザーの励起源であるYAGレーザーについては、Qスイッチ動作を行うところまで確認を行った。 データの蓄積に関しては、上記の大腸菌懸濁液、従来から行っている植物の観察(ミューレンベキア、アナカリス、野菜)、細胞に関しては、他大学の協力の下、ヒトのガン細胞のデータを蓄積することができた。
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