量子情報通信技術の分野において、光の非古典的性質である量子相関は重要なリソースである。様々な応用を考えた場合、いろいろな波長で量子相関を発生させて波長を可変にする技術は必要不可欠である。本研究では、そのような基盤技術をCWで確立することを目的としている。本年度は前年度において行った理論解析を踏まえ、製作した和周波混合用光共振器の安定化のための光学回路・電子回路の設計製作を行いフィードバックロッキングの実験を行った。開発した光共振器では別のレーザーから注入するポンプ光(1064nm)を共振安定化させると同時に注入する光子対ビームの一方の光波(1064nm)と波長変換された532nmの光波が同じ共振器で共振しなければならない構造になっており、これらの光波を同時に共振させながら安定化させるには共振器を独立に制御する必要性が生じて技術的に困難となった。そこで、共振器の改良を行い共振器内に偏光ビームスプリッタを置いてポンプ光と光子対ビームの光波が別々の共振器で共振する構造とした。532nmの光波は共振器の1つのミラーと非線形結晶の端面にコーティングしたミラーで独立に共振する構造とした。さらに、このような構造は波長可変の光パラメトリック発振器として動作するという新たな着想を得た。改良した光共振器を光パラメトリック発振器として動作させたところ、低発振しきい値(30mW)のCW発振が得られて800MHzの連続周波数(波長)可変特性が得られた。従来のCW光パラメトリック発振器ではこのような連続周波数可変特性を得ることは極めて困難であり、得られた成果については特許出願を行うと共に、応用物理学会、レーザー学会において発表を行った。
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