研究概要 |
本研究は,熱電変換素子に直流電流を流し,ペルチエ効果を起こしたときに発現が期待される電子-格子系の非平衡状態現象の発現の可能性やその機構の実験的な解明を目的とした研究である。今年度はその準備段階として,1)測定装置の開発を行った。設備物品として熱電物性測定用真空チャンバーの設計を行い,特注品として業者に発注,納入した。その後,試料ホルダーの作製に取りかかった。リード線の配線,温度計の設置など試料周りの作業は研究代表者のグループで行い,標準的な試料での熱電物性の測定,評価を行い、測定系として完成させた。 2)試料作製であるが,従来行なっていたビスマスのマイクロワイヤーをモールドから取り出したものを用意し,熱電性能指数の測定を行った。シングルワイヤーの取り出しは,アレイ素子を直接弗化水素酸液に浸してガラスのモールドを溶かすことにより行なった。それに加え,高い熱電性能指数をもつ材料であるp型素子(Bi,Sb)2Te3,n型素子Bi2(Te,Se)3についてもグラスシールドメルトスピンニング法を採用し,直径10ミクロンから60ミクロンの範囲での細線素子の作製を行なった。 2)で作成された試料を用い,1)の装置に基づいてまず性能指数の評価を行い,ビスマスについては期待通りの結果を得ることに成功した。p型素子(Bi,Sb)2Te3,n型素子Bi2(Te,Se)3については,素子の熱伝導度が極めて低いことから測定用試料の条件の設定を丁寧に行なう必要があることが明らかになった。現在も正確な測定条件の確立に向けて実験を継続中である。 来年度はこれらの結果を踏まえ研究の推進を計ることとする。
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