スパッタ粒子の輸送過程・付着分布と、供給される反応性ガスの装置内部における収支を含めて、反応性スパッタ製膜プロセスを理解する研究を進めている。具体的には、ターゲット表面の金属モード・化合物モード遷移と、堆積した薄膜の酸化状態を、実験及びシミュレーションから理解することを本申請研究の目的としている。平成20年度は以下のような装置開発・実験研究を行った。 平成19年度に設計・製作した、ミニチュア膜厚モニタを制御するコントローラの新規設計・製作を電子回路設計製作を請け負う会社に依頼したが、技術的な問題点より、最終的にこちらの会社での製作は断念した。結果的に既製品の6ch膜厚モニタコントローラをインフィコン社より購入した。この判断の遅れのため、実験研究が滞ったことが本年度の最大の反省点である。コントローラ購入後、PCとの通信プログラムを作成し、同時に多chの成膜速度を計測できるシステムを確立した。 また、現有の2インチサイズのスパッタ蒸発源に対応するものとして、磁場分布の異なる磁石を新規に購入した。これによって放電プラズマの分布と、ターゲットからの蒸発分布が異なる場合について、ターゲットのモード遷移をもたらす製膜条件がどのように変化するか、基板に堆積する膜の組成がどのように変化するかを議論できるようになった。 シミュレーションプログラムでは、スパッタ粒子が気相中に突入した場合に、ガスとの衝突によってエネルギーを失い、熱化するまでの圧力・距離積の値を各種元素について計算した。これにより、弾道的・拡散的な輸送がそれぞれ支配する2領域の境界となる圧力が、元素の重さによって遷移するという実験結果を定量的に説明することに成功した。
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