研究概要 |
本年度はナノ流体に関する国内外の研究の現状を調査し,我々独自の研究方針を設定し、実験およびシミュレーションを手段とする研究を開始した。 金属またはガラス性のシャーレに薄くシリコン油を満たし、下面を加熱するとベナール対流の規則的なセルが出現する。シリコン油にアルミ粉を混ぜておくとセルの形状をはっきり観察することができる。金属とガラス容器ではセルの形状に違いが見られた。またシリコン層を薄くすると共にセルのサイズが小さくなることも明らかになった。ベナールのセル内の温度分布はサーモグラフィーにより観測した。これらの実験結果は今後ナノ対流の実験の基礎となるものである。 流体の熱伝導や対流を原子的尺度から研究するため分子動力学シミュレーションのコードを開発した。アルゴン原子をモデルとし,レナードジョーンズポテンシャルを採用した。数万個の原子で構成されるモデル流体中に温度勾配を作り.熱流が起こっている状熊を実現した。個々の原子の運動を追跡し、原子の集団的運動を抽出することにより対流を検出するアルゴリズムを開発した。しかしながらシミュレーションで対流は未だ確認されていない。 熱線法による熱伝導測定装置の設計もおこなった。石英セル内に白金線のヒーターを設置し、白金線の温度上昇の時間変化から熱拡散率と熱伝導率を評価するものである。白金線は抵抗温度計としての役割もする。銅のナノ粒子やカーボンナノチューブを液体(水)中に分散させナノ流体を作る方法も検討している。
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