| 研究概要 |
本年度に取り組みあげられた成果は以下のとおりである.
(1)真空への膨張流の振舞いに対する基礎計算の結果を踏まえ,2つの膨張流に挟まれた領域に形成される「真空」領域における気体の振舞いを調べる本格的な計算に着手した.これまでのところ,気体温度が「真空」領域では非等方的な漸近挙動を示すことなど,興味深い結果を得ている.数値解の高精度を確保しながら,その詳細を検討・解明することが残された主な課題である.
(2)気体論的境界の特異性を解析に抽出する新しい数値解析法を具体的に検討した.その結果,予想通りに特異性を抽出することに成功したが,数値解の保存性が特異性を抽出しない従来の直接解法よりもむしろ悪化する結果を得た.後者の問題を解決する見通しはいまのところ立っていない.
(3)線形化方程式に関する一般対称性の理論とエントロピー理論との関連を明らかにした.グリーン関数的な考察を出発点としてオンサーガの相反性が対象系の境界の各点毎の対応にまで詳細化できることを明らかにするとともに,既存の理論が無限領域に対して正しくない対称性を主張していることを明らかにした.一般対称性に関するこれらの一連の研究成果は研究発表欄に記載の多くの学会で報告するとともに,すでに雑誌論文としても公表されている.また,次年度の7月に開催される第27回希薄気体力学国際会議においても,その成果を話題とした招待講演を行う予定である.
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