研究概要 |
流動,伝熱,拡散を,それぞれ,運動量の移動,エネルギーの移動,物質の移動として統一的に扱うのが移動現象論であるが,この研究の対象となる物質は,常磁性体と反磁性体に分けられる.いずれも強磁場存在下においては磁場から磁気力を受ける.これは外力であり,重力と釣り合わせると疑似無重力環境を実現できるなど,その応用が期待されている.本研究は磁気力費従来の移動現象に応用した数値解析を行うものであるが,本年度はまず磁気力を組み込んだ強磁場下における移動現象の支配方程式の導出を行った.さらに磁気力を移動現象に組み込むための数理モデル化を行い,実際の問題に適用する準備を行った.具体的には,まず,強磁場下における移動現象の支配方程式の導出と,次元解析を用いた現象の整理を行った.すなわち,流体力学(連続の式,運動方程式),伝熱工学(エネルギー方程式),拡散工学(拡散方程式),電磁気学を体系的に取り扱った移動現象に関する基礎式を総合的に導出し整理した.次に次元解析手法を用い,具体的に熱流動問題に関する現象の相似性を検討した.その結果,従来の熱流動問題において現れるグラスホフ数で表された浮力項に加え,磁束密度の2乗の勾配を用いて表される磁気力を新たに外力項として加えることが必要であることがわかった.基礎式の導出と現象の整理を完了し,まずは磁気力自身が粒子に与える影響を確認するため,強磁場下において円筒容器内に導入されたwater mistの挙動を数値解析し,実験結果と比較検討した.解析の結果,water mistは磁気力によりその運動を弱められること,そして,その停滞位置が実験結果ときわめて良く一致することがわかった.
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