今年度は、(1)Sn/Ag合金を用いたインデンテーションのFEM解析、(2)電解めっき銅箔試験片の作製、(3)電解めっき銅箔の粘塑性変形挙動の調査、(4)マイクロインデンテーション試験機の製作を行った。 (1)では、Sn/Ag合金のインデンテーションを、バルク試験片から得た弾・塑性・クリープ特性を表す材料定数を用いて、FEMで解析した。解析で得た荷重-押込み深さ曲線を従来のインデンテーションによる変形特性評価法に適用し、弾・塑性・クリープ特性に関する材料定数を得たところ、得られた値は解析に用いた値と異なっていた。これは、従来の評価法における応力とひずみの算出法に起因すると考えられる.今後はインデンテーションでの応力とひずみの定義について検討する必要がある。 (2)では、フォトリソグラフィーで作製した銅基板の上に銅を電析させ、任意厚さのドッグボーン形状試験片を作製することができた。しかし、この方法で作製した試験片は引張試験で伸びがばらつく傾向がみられた。そこで、市販の電解めっき銅張積層板(CCL)の銅層をフォトリソグラフィーでドッグボーン形状にエッチングし、その後ポリイミド層を溶解除去して試験片を作製した。この試験片は、15%程度の伸びが得られ、ばらつきは非常に少ないものであった。但し、本研究では電解めっき銅箔の粒径と変形挙動の関係についても検討するため、今後は上述の電析による試験片作製法を改善し、任意の粒径をもつ試験片が作製できるようにする。 (3)では、CCLから作製した試験片を用いて引張り、クリープ、応力緩和の試験を行った。その結果、電解めっき銅箔は、バルクの銅ではみられない時間依存の変形挙動、すなわち粘塑性変形挙動を示すことが判明した。今後、この結果から弾・塑性・クリープ特性を表す材料定数を導出し、インデンテーションで得られる値の参照値とする。 (4)では、インデンターの位置制御などに問題があるため、今後も試験機の製作を継続する。
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