研究概要 |
(1)Au-Si合金クラスターの特性解析については、当初予定していたAu-Si原子間相互作用に対するMEAMポテンシャルの使用が困難であるため、異種金属元素から成るバイメタルクラスターの形成過程の解析を行った。4種の金属元素Au,Ag,Pt,Pdの任意の2種の元素の組み合わせに対して、それぞれの元素から成るクラスターの合体によるバイメタルクラスターの形成過程を調べた。その結果、形成されるバイメタルクラスターのモルフォロジーは、それぞれの元素のバルク結晶の格子定数から計算される格子不整合とクラスターのサイズに依存すること、クラスターのサイズがそれぞれの元素の組み合わせで決まる臨界サイズを超えない範囲では、格子不整合が大きい場合にコアシェルクラスターが、格子不整合が小さい場合に合金クラスターが形成され、クラスターのサイズが臨界サイズを超えると、合体は途中で停止し、両クラスターの界面で整合した合体クラスターが形成されることが分かった。 (2)Ge(コア)/Si(シェル)ナノワイヤとGe/Si軸方向積層型ナノワイヤの引張シミュレーションを行い、弾性域ではヤング率を求め、非弾性域では変形挙動を調べた。まず、Ge(コア)/Si(シェル)ナノワイヤのヤング率のGe分率依存性を調べた。その結果、Ge(コア)/Si(シェル)ナノワイヤのヤング率は、ナノワイヤの軸が<111>方向の場合には、Ge分率が0.35までSiナノワイヤのヤング率とほぼ同じ値であり、Ge分率が0.58以上でVegard則に従うこと、ナノワイヤの軸が<110>方向の場合には、ほぼすべてのGe分率の範囲でVegard則に従うことが分かった。次に、Ge/Si軸方向積層型ナノワイヤに対して、積層するGe層とSi層の厚さを変えて引張シミュレーションを行った。その結果、Ge/Si軸方向積層型ナノワイヤのヤング率は、ナノワイヤの軸が<111>方向の場合にはGe層とSi層の原子数の比に依存するが、ナノワイヤの軸が<110>方向の場合にはほぼ一定であること、非弾性域ではGe層で原子鎖が形成され、Ge層で破断が生じることが分かった。
|