研究概要 |
高機能性付与材料の超高サイクル疲労に現れる内部き裂発生型疲労破壊の機構解明を行い,高信頼性・安全性を保障する疲労設計手法の確立,有効な疲労強度向上策と最適な高機能性付与条件の確立を目的として,高炭素クロム軸受鋼SUJ2および低合金鋼SNCM439の軸荷重疲労試験を行い,以下の結論を得た.(1)高炭素クロム軸受鋼SUJ2を用いて応力比R=-1,0,0.5の条件下で軸荷重疲労試験を行った結果,表面き裂発生型破壊(S型),き裂発生起点となった内部介在物近傍にGBF領域を形成しない内部き裂発生型破壊(I型)および同GBF領域を形成する内部き裂発生型破壊(IG型)の3種類の破壊様式が観察された.(2)上記破壊様式は負荷応力振幅に依存して現れ,破壊様式の変化にも関わらず連続的なS-N曲線を呈した.また,破壊様式の出現は応力比の依存性を示し,R=-1および0では3種類の破壊様式が現れるのに対して,R=0.5ではS型とIG型の2種類の破壊様式が現れた.(3)破壊様式の遷移について破壊力学的検討を行った結果,表面圧縮残留応力の影響によって破壊様式が変化することを明らかにし,破壊様式の遷移図を新たに提案した.(4)軸荷重疲労試験中に形成されるGBF領域をFRASTA法によるコンピュータ・シミュレーションを行った結果,これまでに著者らによって提案した「微細炭化物の離散はく離説」が成立っことが明らかとなった.(5)低合金鋼SNCM439の軸荷重疲労試験(R=-1)の結果,S型とIG型の2種類の破壊様式が認められ,明瞭な二重S-N曲線を示した.これは上記SUJ2鋼とは異なっており,S-N曲線の形態は荷重負荷様式(回転曲げと軸荷重)の影響によるものでは無く,供試材に依存するものであることが推察された.(6)上記材料に対する破壊様式の変化を破壊力学的に検討した結果,表面圧縮残留応力を考慮した破壊様式の遷移図によって説明できることを明らかにした.
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