研究概要 |
非結晶性高分子材料の降伏には,1.すべり線支配型とせん断帯支配型の2種類のモードがあり,2.それらの遷移は温度,ひずみ速度に依存した条件で与えられることを示してきた。いずれの降伏モードにおいても,降伏前に発生するすべり線が重要な役割を果たすので,すべり線挙動を把握することが,降伏モード遷移現象解明の基本となることが推定した。高分子材料のすべり線挙動に注目した研究は全く行われてこなかったこともあり,本研究では,すべり線の発生、成長挙動に焦点を当て調べた。非結晶性高分子材料のPETおよびPC透明薄板材を用いて,ひずみ速度および温度を変えた条件下で,せん断試験および引張り試験を行い,すべり線の成長速度および密度を測定した。その結果,1.すべり線成長速度Vは,Eyring流の速度過程論を基にしたV=V_0exp{-(Q-ατ)/RT}(;V_0,Q,αは定数,Rはガス定数,Tは絶対温度,τは負荷せん断応力)によって与えられる,2.一定ひずみ速度試験では,すべり線密度ρは,ひずみγとともに増加しρ=β(γ-γ_s)(;β,γ_sは定数)で表されることを示した。以上の結果を利用すれば,金属材料の降伏を説明するのに有効なGilman-Johnstonによって示された転位論的アプローチをアナロジー的に適用することによって,非結晶性高分子材料の降伏現象をすべり線というなのスケール的な観点から明らかにすることができることを示唆した。
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