研究概要 |
非結晶性高分子材料の降伏現象は温度及びひずみ速度に依存することが指摘されているが,降伏の物理的機構は未だに明らかではない。これまで典型的非結晶性高分子材料であるPETおよびPC材の降伏モード遷移を研究していたところ,降伏に先がけて微細なすべり線が出現することを発見し、このすべり線の発生・成長が降伏挙動に重要な影響を与えることを明らかにした.そこで,すべり線の発生・成長を詳細に測定した結果,すべり線の成長速度はEyring流の速度過程論に基づいて説明できることを示し,さらに,すべり線密度の観察から非結晶性高分子材料の降伏現象について転位アナロジーを用いた解析の可能性を示唆する結果を得た. 本研究では,すべり線挙動(すべり線の発生密度および成長速度)について,ひずみ速度と環境温度とを広範囲に変えて実験を継続実施して,これまでの結果を確認するとともに,すべり線密度の測定結果を基に転位アナロジーを適用し,非結晶性高分子材料の降伏現象のメソ・スケール的な解明を試みた.非結晶性高分子材料PET材のすべり線成長速度が負荷応力の増加とともに、また環境温度の増加とともに増加することを明らかにし,これらの温度・応力依存性に対して,Eyring流の速度過程論を適用した整理を行い,降伏の素過程の活性化エネルギーと活性化体積とを求めた.さらに静的及び動的粘弾性測定によって,PET材の主分散、副分散について同程度の活性化エネルギーが求まることを示して、降伏の分子論的素過程を支配する分子運動について明らかにした。またすべり線密度の経時変化の整理を行い、転位論アナロジーによる降伏現象の解析を行った.
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