研究概要 |
β型チタン合金のゴムメタルを用いて,大気中における回転曲げ疲労試験を実施し,大気中での疲労破壊機構について検討した.また,汎用的なβ型のチタン合金であるTi-22V-4Al合金の溶体化処理材についても疲労試験を行い,疲労破壊挙動を比較した.その結果,ゴムメタルは明瞭な疲労限度を有さず,その疲労強度は全体的にTi-22V-4AL合金溶体化処理材よりも高いことが判明した.さらに,ゴムメタルの疲労試験片表面を詳細に観察したところ,多数のすべり線を確認し,Ti-22V-4Al合金溶体化処理材と同様に疲労き裂がすべり変形により発生することを明らかにした,さらに,静的な塑性変形挙動を明らかにするため,表面を電解研磨によって鏡面仕上げした試験片を用いて引張試験を実施し,所定のひずみ量で試験を停止して詳細な表面観察を行った.その結果,試験片表面には結晶粒単位の多数のすべり線が確認された.すなわち,静的な塑性変形においても,汎用的なβ型チタン合金と同じくすべりにより塑性変形が進行したと考えられる.ゴムメタルは,巨視的な断層など,すべり以外の機構によって塑性変形が進行するとされているが,本研究ではそのような機構は発現しなかった.ゴムメタルの特性は化学組成や強加工によって発現するとの報告もあり,そのような影響因子についても検討する必要がある.さらに,β型チタン合金の基礎的な腐食疲労特性を把握するため,3%NaCl水溶液中での疲労試験を行った. その結果,大気中とほぼ同程度の疲労強度が得られ,破断試験片には腐食ピットは認められなかった.このような挙動も,汎用的なβ型チタン合金と同じであり,特異な塑性変形挙動の発現による耐食性の低下は生じないことを明らかにした.
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