研究概要 |
昨年度のβ型チタン合金ゴムメタルとの比較検討を行うため,ゴムメタルと同様に生体材料として期待される高窒素オーステナイト系ステンレス鋼のSUS304N2を用いて,大気中と3%NaCl水溶液中で疲労試験を行った.その結果大気中では,汎用のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304と比較し,SUS304N2は約20%高い疲労限度を有することが判明した.また,3%NaCl水溶液中では,SUS304N2の疲労強度は大気中とほとんど同じであり,明瞭な腐食ピットも認められなかった.すなわち,ゴムメタル同様SUS304N2も,生体材料として高い耐食性を有することを明らかにした.次に,細胞培養環境下の疲労試験システムを構築した.まず,試料表面に付着させた細胞をインキュベータ内で増殖させ,その後試料表面の腐食様相を観察した.3%NaCl水溶液中では腐食ピットが生じなかったゴムメタル,SUS304N2ともに,細胞培養環境下では多数の腐食ピットが発生することが判明した.これは,細胞の生体活動によって生じる活性酸素の影響と考えられる.さらに,試料表面で細胞を増殖させた後,培養液を滴下しながら回転曲げ疲労試験を行う,細胞培養環境下疲労試験を実施した.その結果,ゴムメタル,SUS304N2ともに顕著な疲労強度の低下は認められなかった.これは,繰返し速度19Hzと比較的速い周波数で実験を行っており,腐食の影響が顕在化しなかったためと思われる.人が運動する際に加わる荷重の繰返し速度は1〜2Hz程度であることを考慮すると,デバイス設計に用いる場合には1〜2Hzまで速度を落として試験を行う必要があることを示した.
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