研究概要 |
本研究は自動車の衝突時の後席乗員保護を対象とするもので,日本人体格に対応した人体有限要素モデルを作成し,傷害リスクを減少させるシートベルト特性を明らかにすることを目的とする.標準体格男性と小柄女性ダミーを用いて衝突速度50km/hを想定した加速度を与えた台車試験を行い,乗員挙動を把握するとともに傷害値を計測した.両ダミーともに胸たわみが大きな値となり,許容値を超えており,傷害の可能性が高いことが示された. 後席では拘束装置がシートベルトのみとなるため,ラップベルトと腰部,ショルダーベルトと胸部の相互作用が重要となる.標準日本人を想定し骨盤形状とそのまわりの軟部組織を有する人体有限要素モデルを作成し,ラップベルトと骨盤に働く力の関係を調べた.また,着座姿勢やシートベルトジオメトリイと,ラップベルトが骨盤から外れて腹部に移動するサブマリンの発生との関係を調べた.その結果,骨盤形状や軟部組織はラップベルトに働く力に対して及ぼす影響は小さい一方で,初期の乗員の骨盤角度,ラップベルトのアンカー角度がサブマリンの発生に大きな影響を及ぼすことがわかった.さらに,車両による乗員傷害値低減の可能性を明らかにするため,シートベルト特性,ベルトプリテンショナ,車両加速度と乗員傷害値の関係を調べた.車両加速度は全ての体格の乗員に対して,傷害値に及ぼす影響が非常に大きく,拘束装置の適用が限られている後席乗員の保護は,車両の衝突特性に強く依存することがわかった. 後席のCRS使用時の子ども乗員についても,人体有限要素モデルと衝突ダミーを用いた検討を行い,傷害発生率の高い側面衝突について,発生メカニズムを明らかにした.
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