研究概要 |
共振器,フィルタなどの振動するMEMS機器においては,振動エネルギーの損失が共振子,センサ,高周波通信機,ジャイロスコープなどにおける実用上の障害となる.したがって,MEMS機器の振動エネルギー損失の支配的な要因を見出すことは重要なテーマとなっている.そこで本研究では,MEMS共振器およびマイクロSAW共振子振動の熱弾性減衰特性を圧電連成熱弾性振動理論に基づき解明し,高性能なMEMSデバイスの設計指針を与えることを目的として,平成19年度は以下のように必要となる解析法の開発を行った. (1)最終的に熱弾性の効果を評価するには,MEMS共振器およびマイクロSAW共振子振動は材料の結晶方位を考慮に入れ異方性の材料定数を考慮した解析が必要となる.まず,異方性の圧電体に対する定常振動解析法を境界要素法により定式化した.異方性の材料定数に対しては,基本解を閉じた形で得ることができないため基本解の計算時間が大きくなってしまう問題があったが,基本解の値に対する数表を作成することにより解決した. (2)異方性圧電連成熱弾性体のバルクモデルに対する連成熱弾性振動解析のための有限要素法解析コードを開発した.連成の熱弾性効果を考慮することにより,有限要素法の減衰マトリックスが複素数成分を有する非対称のバンドマトリックスとなり,大規模固有値問題として解析せざるを得なくなった.また,質量マトリックスの成分が小さいために固有値の収束が得られなかった問題を解決した。 また,本解析コードを用いて熱弾性の連成効果の有無によるSAW共振子の周波数応答を調べた結果,共振峰のドリフト効果を見出すことができた.
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