研究概要 |
構造内部の力の流れを把握し,物理的意味(awareness)を表現し得るよう,新しい構造解析手法を開発した.内部の力の伝わり方を表現する新たな量U*およびU**を用いて,力の流れと荷重伝達の経路を表現する方法を立案した.特にこれまで検討を行なってきたU*は分布荷重に対応できなかったが,新たにU**の開発を試み,その有効性を確認した.新たな指標をU**を実際問題に適用し計算するには膨大な計算時間を必要とする.実際,100万節点程度の有限要素法を用いると,現在のパソコンでは何年も必要とする。これを高速化することは実用上必須な課題である.この問題に対し,検査荷重法なる新たな手法を導入し,解決することができた.その結果,速度は約100倍にまで達した.また汎用有限要素法NastranにU*あるいはU**専用の機能を組み込むことにより約4倍の高速化が可能となり,全体で約400倍の計算速度を得ることができた.これにより,企業の最速の計算機で,約1日だけで計算が可能となった. 実際に自動車車体に適用し床構造に面圧を負荷した場合について,また曲げ振動の1次固有値に対する負荷に関して計算した結果,力の伝達を適確に表現していることが明らかとなった.さらにU*あるいはU**の分布状況を基に,補剛を行なうことを試みた.ここでは仮想的な部材を導入し,その部材の変形によるひずみエネルギーを求め,それによる補剛効果の推測を行なった.その結果,仮想部材による推論は効果を極めて有効に予測できることが明らかになった.その補剛により剛性が約20%上昇する可能性のあることを示すことができた.
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