研究概要 |
近年,環境保全の観点から,製品製造に伴う有害廃棄物の放出削減が強く求められている.冷間鍛造加工に多用されているリン酸塩化成被膜(ボンデ被膜)の処理は大変煩雑で大きな設備設置面積を必要とする上に,有害なスラッジを大量に放出するため,ボンデ被膜に替わる新たな潤滑被膜の開発が精力的に行われている.本研究では,線材表面潤滑被膜処理メーカーにおける製膜条件の選定,製膜液の品質管理に使用でき,被膜のユーザーである鍛造メーカーにおける被膜(被加工材)の受入れ検査の手段として使えるトライボ性能評価法として据込み-押出し形試験法を提案している.本年度では以下の各項目を明らかにした. 1.焼付き現象に及ぼす金型表面性状の影響を表現するパラメータとしては金型表面の最大高さRzよりも突出山部高さRpkが適している. 2.内壁部摩擦せん断係数の焼付き臨界値0.12〜0.16と,外壁部摩擦せん断係数との差は小さく,焼付きが発生しなければ表面積拡大比による摩擦せん断係数の増大はみられない. 3.突出山部高さRpkの焼付き臨界値は,被膜によって異なるがおよそ0.045〜0.056μmの範囲内にある.焼付き臨界値を越えない範囲においてもRpkの増大に伴い,摩擦せん断係数の上昇がみられる. 4.Rpkの臨界値を越えた領域での焼付き挙動は被膜により異なり,ボンデ被膜では焼付きの進展が緩やかであるのに対し,一液潤滑被膜では急激に悪化する.スキンパス伸線相当の押出し加工を施すことによって焼付きの急激な進展が緩和される傾向がみられる.
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